はじっこに置いといてください。たまに読んでください。

日常の感じたことや出来事をつらつらと。20歳になりました

728文字のフィクション

雨は特別な天気だ

いつでも大切なことが起こるのは雨の日で

それでも雨は当たり前のように落ちてくる

銀色の舗道と水たまりの表面に踊る水滴を見ると何処からともなく深いため息がついて出た

僕は水たまりを踏んづけて自分のくしゃくしゃの顔が映らないように下を向いて歩いた

この道を歩くことは今後ないのだろうと考えて振り向いたり、白いため息を呼吸に紛れ込ませてみたりして狭い道幅の長く暗い道を名残惜しみながら歩いた

すぐ横の駅のホームから電車の発車ベルが聴こえて僕の足は止まった

僕と"誰か"の体との物理的な距離がどんどんと時速120kmで突き放されて行ったと同時に"誰か"について行った僕の心と残された"体っぽ"との精神的距離も大きく広がった

電車の光が見えなくなるまで立ち尽くしていた僕が何を考えていたのかは憶えていない

口の中は血の味がした

的外れな恨みつらみを並べてみたり独り言を言ったりしたけど白く空に昇って行くばかりで自分の小ささをつめたい風に刺されるばかりだった

一抹の後悔とこれでよかったという安堵感を胸にしまった

雨は弱くなる一方でもっと強く僕を叩いてくれと思って歩いた

いつの間にか駅の明るい光が見えてきて改札と雑踏の音とがどかどか耳に入ってきた

逃れるためにイヤフォンをつけた

ガラガラの電車に"体っぽ"を乗せてだらしなく座らせ外を見たり向かいに同じようにだらしなく座っている人を見た

夜の駅と夜の電車は少し眩しすぎた

最寄駅につくアナウンスが聞こえてイヤフォンからは何の音も流れていなかったことに気がついた

誰に見られているでもないのに焦りを隠しながら急いでそれとなく音楽を流した

やっぱり最初から最後まで雨の日は特別だった

きっとこれからも。