いつか、忘れてしまうから。

感じたことを"エモい"で片付けるのやめた

実家

会うたびに痩せて行く祖父

几帳面で細やかなところまで厳しくて

食卓の真ん中に座って

僕のいってきますと、ただいまを聞いてくれた

 

会社に入った年の夏、

喜び勇んで一人暮らしをはじめた

そこからあっという間に3年

僕は何も変わらず、本当にあっという間に感じた月日が、久しぶりに実家に帰ると押し寄せてくる。

 

久しぶりの食卓も

祖父は僕に話しかけることはなく

何を考えているのか、僕のことがわかるのかどうかもわからなかった

 

ただ、年と共に判断力が低くなり

几帳面な部分が研ぎ澄まされた祖父は

静かに、なんども、テーブルを拭いていた

 

髪の毛は昔から薄かったけれど

痩せて細くなった手首、口元の無精髭

どれも僕が知ってる祖父と大きく違っていた

 

ボケても声を荒げたり、騒いだりせず

黙々とご飯を食べ、食べながらテーブルを拭き上げる大人しさが

小さい頃の僕には見えていなかった祖父の芯の部分を剥き出しにしているように映った。

 

いつまで元気でいてくれるんだろう

今日の飯は美味かったかな

僕のことは覚えているのかな

聞いても答えは返ってこなさそうだったから

聞かなかった。

 

人が生きる時間を100として、

まだまだ先が長いと思っていても

残り20〜30になる頃には

聞きたいことも聞けない、言いたいことを言っても伝わらない。

そんなふうになってしまうと感じた。

 

もう一度、あの頃の祖父に会えたら

あの頃の祖父が今の僕にあったら

なんと声をかけるだろう。

 

ありがとう